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EVMで進捗と費用を読む|PV・EV・AC、差異、完成時費用の予測

公開: 2026-10-02
予算と実費を区別し、CV・SV・CPI・SPIを計算します。出来高の評価規則、EAC・ETC・VACの前提、日程指標の限界を独自事例と6演習で学びます。

「予算の半分を使ったから、作業も半分終わった」は成り立ちません。支払いや工数の消費と、完成した成果の量は別です。EVMは計画した作業、完成した作業、実際に費やした費用をそろえて比較し、進捗とコストのずれを数値にします。数式を選ぶ前に、出来高の判定条件と予算の基準を確認します。

この記事で理解すること

  • PV・EV・ACとBACの違いを説明し、作業単位の予算から出来高を集計する。

  • 費用差異・進捗差異と効率指数を計算し、符号と単位から状況を読む。

  • 完成時費用予測の前提、測定の不備、日程ネットワークを併用する理由を判断する。

架空の予約システム改修を例にします。金額の単位は万円、金額は同じ費用範囲の累計、評価時点は第4週の終了です。現実の投資や契約に関する助言ではなく、プロジェクト管理の教材です。

見積りから時間配分したベースラインへ

見積りは類似案件からの類推、単位当たり作業量に基づくパラメトリック、WBSの作業ごとに積み上げる方法などがあります。根拠となる規模、役割別の工数、単価、再利用、リスクを記録します。同じ金額でも作業範囲が違えば、そのまま比較できません。

承認済みの作業範囲と予算を、いつ実施するかへ配分した基準が進捗・費用を測るベースラインになります。BACは完成までの総予算です。ここではA200、B300、C500の合計1000です。未承認の追加作業や管理予備費等を自動的に同じBACへ含めるとはせず、問題や管理ルールの費用範囲を確認します。

変更は評価と承認を経て基準へ反映し、以前の基準と変更理由を残します。遅れが見えないように毎回計画を実績へ合わせると、差異の意味が失われます。承認と変更手順の詳しい説明は計画・変更管理の記事へつなぎます。

三つの値は同じ予算尺度で比較する

PVは評価時点までに完成する予定だった作業の予算額、EVは実際に完成した作業を予算で評価した額、ACは実際に発生した費用です。EVは売上や顧客に提供した経済価値、実際の支払額を表す値ではありません。

計画・成果・実費を分ける三つともこの事例では万円ですが、金額が表す役割は違います。PVEVAC表す対象予定していた作業完成した作業発生した費用評価する尺度承認済み予算同じ予算実際の費用問いどこまで進む予定かどれだけ完成したかいくらかかったか
計画・成果・実費を分ける

三つともこの事例では万円ですが、金額が表す役割は違います。

作業

総予算

第4週の予定完成率

実際の受入済み率

PV

EV

AC

A

200

100%

100%

200

200

230

B

300

100%

50%

300

150

220

C

500

0%

0%

0

0

0

合計

1000

—

—

500

350

450

Bは均等な10個の受入対象のうち5個が条件を満たし、出来高50%とする測定規則です。Aは受入完了、Cは未着手です。PV500に対してEV350、AC450なので、予定の成果には150不足し、完成した成果の予算350を得るのに450かかっています。

作業の完成率(100%+50%+0%)/3=50%を全体へそのまま当てはめるのは誤りです。予算で重み付けしたEV/BACは350/1000=35%です。予算が異なる作業を等しい重みで平均するとEVMの出来高と一致しません。

出来高の規則:途中と完成を先に定義する

完成率は担当者の感覚だけで決めず、成果物の受入、完了単位、マイルストーン等で評価します。0/100法は完了まで0、完了時100%。50/50法は開始で50%、完了で残り50%です。長い作業に50/50を使うと開始だけで大きく出来高が上がるため、特性に合う規則を選びます。

この事例のBは完了単位数で測っています。0/100法へ変更すれば同じ途中状態でもEVは0になるので、異なる評価規則を混ぜて比較しません。受入を満たさない成果へEVを付けると、未完了や品質不良を過大に評価します。作業の実態と評価規則の対応を記録します。

ACには発生した工数や調達費を同じ期間・範囲で含めます。請求書が届かない費用を落とすとCPIが良く見えます。費用の見越し、集計締切、作業コード等をそろえ、EVとACが同じ範囲を測っていることを確かめます。

差異CV・SV:EVを基準に引き算する

費用差異CV=EV−AC、進捗差異SV=EV−PVです。費用差異が正なら完成した作業の予算より実費が少なく、負なら多い。進捗差異が正なら予定より出来高が多く、負なら少ないという読み方です。

指標

式

この事例

読み方

CV

EV−AC

350−450=−100

完成した作業に予算より100多く費やした

SV

EV−PV

350−500=−150

予定に対して予算換算の出来高が150不足

CPI

EV/AC

350/450≈0.778

費用効率が基準1を下回る

SPI

EV/PV

350/500=0.700

出来高が計画の70%

CVとSVの単位は万円です。SV−150から「150日遅れ」とは読めません。CPIとSPIは比率なので単位がありません。負の差異と1未満の効率はこの条件では悪化を示しますが、原因や是正策まで指標だけで特定できるわけではありません。

CPIとSPIを、別の判断に使う

CPIは一単位の実費で何単位の予算換算の成果を得たか、SPIは予定した出来高に対してどれだけ出来高を得たかを示します。CPI0.778は、実費1に対し予算換算で約0.778の成果を得たという意味です。「予算の77.8%を使った」と読む指数ではありません。

SPIが低くても非クリティカル作業の遅れが中心なら、最終完了への影響は小さい場合があります。SPIが高くても重要な経路が止まっていれば完成日は危うい場合があります。残作業と依存関係、クリティカルパスを併用します。

全作業が完成するとEVはBACになり、基準計画の終了時刻も過ぎていればPVもBACです。遅れて完成した場合でもSPI=1、SV=0となるため、従来のSPIだけでは最終的な遅延日数を表せません。計画日と実績日を別に確認します。

EAC:完成時費用は、予測の前提で変わる

EACは完成時総費用の予測、ETCは現在から完成までに必要な費用の予測、VACはBAC−EACです。まず今後も同じ費用効率CPIが続くと仮定します。残る予算換算の作業はBAC−EV=650なので、その作業を同じCPIで実施する費用は650/CPIとなります。

text
BAC = 1000, EV = 350, AC = 450(万円)
CPI = 350 / 450 = 7 / 9
EAC = AC + (BAC - EV) / CPI
    = BAC / CPI
    = 1285.714... ≈ 1285.7 万円
ETC = EAC - AC ≈ 835.7 万円
VAC = BAC - EAC ≈ -285.7 万円

同じ費用効率が続く条件ではEAC約1285.7、ETC約835.7、VAC約−285.7です。途中で丸めたCPI0.78を代入すると予測がずれるので、計算中は精度を保ち、最後に指定の桁へ丸めます。EACは確定した請求ではなく、条件付きの予測です。

一度限りの費用と残作業の再見積り

過去の費用超過100が一度限りで、残作業を当初予算どおり実施できる根拠があるなら、EAC=AC+(BAC−EV)=450+650=1100です。すでに発生した100を消すのではなく、今後へ低い効率を持ち越さない前提です。

前提

EAC

判断に必要な根拠

同じCPIが続く

約1285.7

作業特性と費用効率が今後も同様

超過が一度限り、残りは予算どおり

1100

再発しない原因と残作業の実施可能性

残作業を720で再見積り

450+720=1170

残作業量・単価・リスクの新しい見積り

残作業を再見積りしてETC720とした場合、EAC1170、VAC−170です。望ましい数字になる式を選ぶのではなく、前提に合う式を選びます。日程悪化が費用にも影響する前提でCPIとSPIを併用する予測もありますが、いつでも自動的に掛ければよいというルールではありません。

TCPIと、計算できない境界を確認する

当初BACへ収めるため残りに必要な費用効率はTCPI=(BAC−EV)/(BAC−AC)=650/550≈1.182です。現在CPI約0.778に対し、残りは約1.182必要なので、改善の具体的な根拠が必要です。指標だけで達成不可能とは断定しません。

ACが0ならCPI、PVが0ならSPIをそのまま除算できません。EV0でCPI0なら、BAC/CPIの予測も使えません。BAC−ACが0以下のときも当初予算に対するTCPIを普通の必要効率として読めません。0を無条件に1へ置き換えず、開始前・集計漏れ・予算超過等の状態を説明します。

是正策は、原因と残作業へ結び付ける

EVMの数値から是正へ測定の不備も先に確認し、指標の低下だけで作業内容を推定しません。測定分析対策1. 同一範囲で比較2. 原因に合う施策3. 変化を確認
EVMの数値から是正へ

測定の不備も先に確認し、指標の低下だけで作業内容を推定しません。

CPI低下なら手戻り、単価、調達、作業量、ACの範囲を確認します。SPI低下なら受入条件、未完了の作業、依存、資源、EVの計上漏れも確認します。単純な増員は費用を増やし、引継ぎで日程を悪化させる場合もあるため、効果を見積もります。

報告は「CV−100、SV−150」という計算だけで終えず、原因、残作業、対策と期限、EACの前提を示します。完成率を上げるため受入条件を緩めると品質と比較基準が変わります。指標を良く見せる操作ではなく、実際の成果と費用の変化を確認します。

演習1:予算で重み付け

条件:A予算200は100%、B300は50%、C500は0%の受入済み率。

問い:EVと全体の出来高率を答える。

解答例:EV350万円、EV/BACは35%。

根拠と誤答の確認:作業3件の単純平均50%ではありません。

演習2:符号と単位

条件:PV500、EV350、AC450万円。

問い:CV・SVを計算し、状況を述べる。

解答例:CV−100万円、SV−150万円。費用超過と計画に対する出来高不足。

根拠と誤答の確認:SVは予算換算の差であり、150日の遅延ではありません。

演習3:一度限りの超過

条件:BAC1000、EV350、AC450。今後は残りの作業を当初予算どおりにできる。

問い:この前提でのEACを求める。

解答例:1100万円。

根拠と誤答の確認:過去の450と残りの予算650を足します。低いCPIが続く前提の式は使いません。

演習4:指数の分母

条件:開始前の作業群でPV0、EV0である。

問い:SPIを0/0から0または1と決めてよいか。

解答例:よくない。除算は定義できず、開始前の状態と測定条件を説明する。

根拠と誤答の確認:未定義を都合のよい効率へ置き換えません。

演習5:完成時のSPI

条件:全体は遅れて完成し、EV=BAC、計画終了も過ぎてPV=BACである。

問い:SPI1から遅れなしといえるか。

解答例:いえない。計画と実績の完了日、日程ネットワークを別に確認する。

根拠と誤答の確認:従来のSPIは完成後に遅延日数を表せません。

演習6:出来高と品質

条件:未受入の成果物を、作成に費やした工数が多いという理由で完成扱いした。

問い:何を是正するか。

解答例:受入等の定めた出来高規則でEVを再評価し、ACは発生費用として別に集計する。

根拠と誤答の確認:費用消費を出来高へ置き換えると、指標は成果の実態を示さなくなります。

参照資料とこの記事の範囲

事例・数値・図・演習は独自に作成した教材です。用語の範囲はIPAシラバス、仕組みは以下の一次資料で確認しました。特定年度の問題を読んでいなくても学べます。製品固有の動作と一般的な原理は本文で区別します。

IPA APシラバス

米国DOE:EVM概要

米国DOE:EVMS Gold Card(用語・指標)

GAO:Schedule Assessment Guide(EVMと日程の併用)

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