VPNを二本にすれば止まらない?|拠点接続・経路切替・LAN冗長化のサムネイル
ガイドAP

VPNを二本にすれば止まらない?|拠点接続・経路切替・LAN冗長化

公開: 2026-10-03
暗号化と可用性を分け、VPNの正常時・障害時の経路を追います。障害検知、VRRP、ループ防止、リンク集約と共通故障を図と演習で理解します。

VPNトンネルを二本作れば、回線が切れても業務は続けられるのでしょうか。二本とも同じアクセス回線を通るなら、その回線の故障で一緒に止まります。機器・回線・経路のどこを分けたかを確認しましょう。

事例:本社と支社を二つの経路でつなぐ

C社の本社は10.10.0.0/24、支社は10.20.0.0/24です。本社側のVPN機器は二台、外向きの回線も二系統で、支社への主経路と待機経路を用意します。通常は主経路を選び、異常を検知したときに待機経路へ切り替えます。

主経路と待機経路本社から支社へ二つの候補を描いた図です。回線・電源・支社側装置まで独立しているかは、図の本数だけでは確定できません。業務主・待機拠点宛先12345本社LAN主VPN機器待機VPN機器支社側装置支社サーバ
主経路と待機経路
  1. 1. 通常の経路
  2. 2. 切替後の経路
  3. 3. 回線AのVPN
  4. 4. 回線BのVPN
  5. 5. 支社LAN

本社から支社へ二つの候補を描いた図です。回線・電源・支社側装置まで独立しているかは、図の本数だけでは確定できません。

図では支社側装置が共通です。その装置を冗長化しなければ、支社側の故障は残ります。複数の経路があっても、共通して通る箇所が故障すれば同時に止まり得ます。

VPNは何を守り、何を保証しない?

VPNは共用の通信網を使って拠点間などを結ぶ仕組みです。IPsec VPNでは認証、完全性や暗号化等の設定を用いてIP通信を保護します。トンネルモードでは元のIPパケットを内部へ収め、外側のIPヘッダでVPN装置間を届けます。

  1. 内側

    業務の送信元と宛先。事例では本社端末から支社サーバへのIP通信です。

  2. 外側

    インターネット等でVPN装置間を運ぶための送信元と宛先です。

  3. 終端

    トンネルを処理する装置。終端より先の通信や端末の権限は別に確認します。

IPsecの利用だけで、必ず同じ暗号化条件になるわけではありません。採用するプロトコル、暗号方式、認証、鍵の更新、対向先の確認を確かめます。VPNは接続先端末の侵害や、許可された操作の不正利用まで解決しません。

暗号化しても回線が止まれば配送は止まります。暗号化は機密性等を守る手段、冗長化は停止の影響を減らす構成として分けて説明します。

障害時の経路は、どの条件で変わる?

通常の経路表で、支社ネットワークをどの次ホップへ送るかを決めます。主経路と待機経路が存在しても、主経路を利用不能と判断する条件と、代替経路を選ぶ手順が必要です。

状態

確認すること

事例の選択

正常

主経路の到達条件を満たす

主VPN機器を選ぶ

故障検知

監視対象へ届かない条件を満たす

主経路を対象外にする

切替

待機経路が利用可能で、戻り経路もある

回線Bを選ぶ

復帰

安定確認と切戻し条件を満たす

方針に従って主へ戻す

リンクが上がっているだけでは、回線の先や対向サーバへの到達を保証しません。監視対象をVPN装置、対向拠点、業務サービスのどこに置くかで、検知できる障害範囲が変わります。

BFDは隣接・転送経路の障害を検知するためのプロトコルです。業務アプリの正常性を直接保証するものではありません。IPsecの対向監視やサービス監視も目的を分け、タイムアウト、誤検知、回復条件を決めます。

この事例で故障検知に3秒、経路変更に1秒、アプリ再接続に2秒かかり、処理は順に行うとすると、復旧まで計6秒です。並行処理の有無や設定によって結果が変わるため、各時間を無条件に足した一般式としません。

ゲートウェイの冗長化と、VPNの冗長化は同じ?

VRRPは複数のルータで仮想ルータの役割を引き継ぎ、端末が使うゲートウェイを継続させる仕組みです。端末は仮想IPを使い、通常の担当が停止すれば別の担当が引き継ぐ構成にできます。

VRRPの切替だけで、VPNトンネルやNAT、FWの接続状態がすべて引き継がれるわけではありません。状態同期、経路、戻り通信、鍵の設定を別に確認します。経路が変わるとTCPや業務セッションが再接続を必要とする場合があります。

入口の引継ぎと、経路の引継ぎ二つの機能を組み合わせる場合も、監視対象と状態の保持は設計で確かめます。ゲートウェイ拠点経路守る部分端末の次ホップ拠点への配送確認する例仮想IPの担当VPN・経路表残る確認上流への到達戻りと再接続
入口の引継ぎと、経路の引継ぎ

二つの機能を組み合わせる場合も、監視対象と状態の保持は設計で確かめます。

LANのリンクを増やすと、なぜループが問題?

LANのスイッチを冗長に結び、フレームを循環させる経路を作ると、ブロードキャスト等が回り続け、学習や通信を妨げる場合があります。ループ防止では、通常使う経路と待機する経路を制御します。

STPやRSTPはループを避ける転送経路を作る仕組みです。根となるスイッチやポートの役割を決め、障害後に必要な経路を再構成します。リンクを増やした分が、平常時にすべて同時利用されるとは限りません。

リンクアグリゲーションは複数の物理リンクを一つの論理リンクとして扱います。LACPなどで組合せを管理し、複数の通信を分散できる構成があります。ただし一つの通信が必ず全リンクを同時に使い、速度が本数倍になるわけではありません。

1Gbit/sを二本束ね、同じ通信のフレームは一つのリンクへ割り当てる構成なら、一つの通信は2Gbit/sにはなりません。一本故障後の合計容量も減るため、通常時だけでなく故障時の負荷で足りるかを確認します。

切替試験で、何を成功とする?

回線を切ってpingが復帰するだけで終わらせず、業務要求、応答、再接続、処理の重複、管理通知まで確認します。送信経路と戻り経路が別機器を通ると、状態のあるFW等で通信が止まることもあります。

回線A・機器A・共通電源・対向装置など、故障させる対象と期待する動作を分けます。切戻しも試し、経路の揺れで再接続を繰り返さないか、残った経路の容量で業務を処理できるかを記録します。

演習1:共通の回線

条件:VPNトンネルは二本あるが、どちらも同じ支社のアクセス回線を通る。

問い:その回線の切断を回避できるか。

解答例:できない。二本とも同じ切断箇所に依存するため。

根拠:論理的な本数と物理的な独立性は別である。

誤答の理由:『VPNが二本だから回線故障も必ず回避』では共通故障を確認していない。

演習2:外側と内側

条件:IPsecトンネルモードで本社端末から支社サーバへ送る。

問い:外側のIPヘッダが主に届ける相手は誰か。

解答例:VPNを終端する対向装置。

根拠:外側はトンネルを運び、内部に業務のIPパケットを収める。

誤答の理由:『必ず支社の業務サーバが外側の宛先』はトンネル終端と業務宛先を混同している。

演習3:検知範囲

条件:VPN装置のインターフェースは正常だが、その先の通信網が停止した。

問い:リンク状態だけを監視して十分か。

解答例:十分ではない。必要な経路上の到達性を確認する監視を追加する。

根拠:リンクが生きていても、その先の配送ができない場合がある。

誤答の理由:『リンクアップは全経路の正常』という判断は監視範囲を超えている。

演習4:停止時間

条件:検知3秒、経路変更1秒、アプリ再接続2秒を順に行う。

問い:復旧までの時間を求める。

解答例:3+1+2=6秒。

根拠:この条件では各処理が直列に続く。

誤答の理由:『経路変更の1秒だけ』は検知とアプリ再接続を落としている。

演習5:一通信の速度

条件:1Gbit/s二本を束ね、各通信は一つのリンクへ割り当てる。

問い:一つの通信が必ず2Gbit/sになるか。

解答例:ならない。この割当てでは一つの物理リンクの容量に制限される。

根拠:合計容量と、一つの通信が利用する容量は異なる。

誤答の理由:『本数倍が一通信の速度』では分散単位を確認していない。

演習6:VRRPの限界

条件:仮想ゲートウェイを別機器へ引き継ぐが、NATとFWの状態は同期しない。

問い:既存のTCP接続がすべて継続すると言えるか。

解答例:言えない。状態の欠落や経路の変化による再接続の要否を確認する。

根拠:入口の担当を引き継ぐことと、各接続状態を維持することは別である。

誤答の理由:『仮想IPが同じなので全接続も同じ』は状態管理の条件を無視している。

出典と仕様を確認する

IPA:APシラバス Ver.7.2

RFC 4301:IPsecアーキテクチャ

RFC 9568:VRRPv3

RFC 5880:BFD

IEEE 802.1AX:リンクアグリゲーション

Cisco:RSTPの設計と動作

関連テーマを続けて学ぶ

IPと経路制御

稼働率と共通故障の考え方

次におすすめの学習

この記事を共有する

編集・検証について

編集・検証:IT資格ラボ編集部

IPAが公開する試験要綱・シラバス・過去問題と、各技術の公式資料を優先して内容を確認しています。制度変更や誤りを確認した場合は、記事を見直して更新します。

編集方針・情報源・訂正方針を見る