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サービスマネジメントと運用管理:ITIL・インシデント管理・問題管理・SLAの実務体系

公開: 2026-10-03
ITILに基づくサービス運用管理のベストプラクティス。サービスデスク(SPOC)の役割、インシデント管理(迅速復旧)と問題管理(根本原因・恒久対策)の違い、SLAと信頼性指標(MTBF/MTTR)の計算公式を網羅解説。

サービスが止まったとき、復旧と原因調査のどちらを進めればよいでしょうか?

インシデント管理は早期復旧、問題管理は原因と再発防止を担当します。連携の仕方を確認し、SLAと稼働率を数値で読めるようにします。

サービスデスク(SPOC: Single Point of Contact)の役割と形態

サービスデスクは、利用者からの問い合わせや障害連絡をすべて一括して受け付ける「単一の連絡窓口(SPOC)」です。

復旧と再発防止は連携する対応期間の長さだけで分類せず、目的を見ます。インシデント管理問題管理目的サービスを早期に復旧原因を分析し再発を抑制例許可された回避策で切替障害原因の記録・恒久対策連携事象・影響・回避策を記録変更の承認・検証後に対策
復旧と再発防止は連携する

対応期間の長さだけで分類せず、目的を見ます。

組織形態

構造・特徴

メリット・採用場面

ローカル・サービスデスク

利用者の物理的な勤務地・事業所の敷地内に設置。

対面対応(手渡し等)が可能。物理的障害に強い。

中央サービスデスク

複数の拠点からの連絡を、1箇所の大規模デスクに集約統合。

運用コストを削減し、スタッフの専門性と対応品質を均一化。

バーチャル・サービスデスク

通信網で接続し、地理的に分散したスタッフがあたかも1つの窓口のように対応。

在宅勤務や複数拠点での分散配置に柔軟に対応可能。

フォロー・ザ・サン

世界各地の時差(昼夜)を利用し、24時間365日の連続サポートを提供。

夜勤シフトを組むことなく、常に昼間の地域のチームが対応。

インシデント管理 vs 問題管理:決定的な責任分担

サービス運用において最も混同しやすいのが「インシデント管理」と「問題管理」です。両者の最優先目的の違いを明確に区別してください。

比較項目

インシデント管理 (Incident Management)

問題管理 (Problem Management)

最優先の目的

★【一刻も早くサービスを通常状態に復旧させること】

★【障害の根本原因を究明し、再発を恒久的に防止すること】

主な活動内容

・迅速な切り分けと一次対応、・ワークアラウンド(暫定回避策)の適用、・上位部門へのエスカレーション

・障害の根本原因(バグ・設計不備)の特定、・既知のエラー(Known Error)の記録、・変更管理プロセスへの変更要求(RFC)提出

対応例

許可された手順で必要なログを保全し、再起動や代替系への切替でアクセスを回復する。

再起動後にメモリリークを起こしていたモジュールのソースコードを解析し、修正パッチを開発した。

時間軸

復旧のための目標時間を重視。重大度・影響に応じて対応する。

原因の除去と再発防止を重視。復旧と並行して進めることもある。

SLA(サービスレベル合意書)とSLM(サービスレベル管理)

ITサービスの提供者と利用者の間で、提供されるサービスの品質水準を定量的に取り決めた合意文書が「SLA(Service Level Agreement)」です。

  1. SLAの項目例

    稼働率99.9%以上、各障害の復旧期限2時間、初回応答15分以内など。各障害の期限と、平均修復時間MTTRの目標は別の指標です。

  2. SLM(Service Level Management)の活動

    取り決めたSLAが遵守されているかを定期的にモニタリング・測定し、定期レビュー(サービス報告会)を実施して、PDCAサイクルによりサービス品質を継続的に改善する。

システム信頼性指標の確認公式(MTBF・MTTR・稼働率)

システムの信頼性と可用性を評価する数理的指標は、午前・午後ともに計算問題の頻出領域です。

指標

英語名称

定義・意味

改善のためのアプローチ

MTBF

Mean Time Between Failures (平均故障間隔)

修理が完了してシステムが正常稼働してから、次に故障するまでの「正常稼働時間の平均」。→【信頼性】

高品質な部品や故障原因の除去。冗長化は部品の故障間隔を直接変えるのではなく、システムとしての停止を抑える。

MTTR

Mean Time To Repair (平均修復時間)

故障が発生してから修理・復旧が完了するまでの「修理時間の平均」。→【保守性】

自動監視ツール導入、手順書の整備、保守員の迅速派遣など。

text
稼働率 A = MTBF / (MTBF + MTTR)
分母は、正常稼働と修復を合わせた1サイクルの平均時間。
観測期間での稼働率 = 正常稼働時間 / (正常稼働時間 + 停止時間)

実戦演習問題とステップ別解説

問1:インシデント管理と問題管理の適切な役割分担

ITILのサービス運用における「インシデント管理」の活動として、最も適切なものはどれか。

  1. ア

    システムの潜在的な脆弱性を特定し、将来の障害発生を未然に防ぐ予防措置を実施する。

  2. イ

    障害発生時に暫定的な回避策(ワークアラウンド)を講じて、迅速にサービスを回復させる。

  3. ウ

    過去に発生した障害履歴を統計分析し、プログラムの根本的なバグを修正する。

  4. エ

    ハードウェアの老朽化に伴う全面的なリプレイス計画を策定し、変更管理委員会に申請する。

【正解】イ

【解説】インシデント管理の最優先目的は「サービスの迅速な復旧」です。原因の完全究明を待たずにワークアラウンド(暫定回避策:再起動や代替系への切り替え)を適用する活動はインシデント管理の典型例です。正解は イ です。

(※アとウは問題管理、エは変更管理・キャパシティ管理の活動です)。

問2:MTBFとMTTRを用いた稼働率の計算

あるシステムが過去1,000時間の運用期間中に、4回の故障が発生した。故障ごとの修理・復旧時間はそれぞれ「3時間、2時間、4時間、1時間」であった。このシステムの稼働率として、最も近い値はどれか。

  1. ア

    0.980

  2. イ

    0.990

  3. ウ

    0.995

  4. エ

    0.999

【正解】イ

停止時間は3+2+4+1=10時間です。MTTRは10÷4=2.5時間です。正常稼働時間は1,000−10=990時間です。演習でMTBFを正常時間÷故障数と算出すると990÷4=247.5時間です。

稼働率は247.5/(247.5+2.5)=0.990なので、正解はイです。

SLA99.9%なら何分の停止を許容するのか

対象が24時間サービスで、測定期間が30日=720時間なら、停止時間の上限は720×0.001=0.72時間、つまり43.2分です。

測定の開始・終了、停止の定義、計画保守を含めるかを合意してから測ります。演習の1,000時間は停止を含む観測期間です。正常時間は990時間なので、稼働率は990/1,000=99%です。

障害対応の優先度は、影響の大きさと緊急度で決めます。再起動前には業務影響、承認、必要な証拠保全を確認し、復旧しただけで原因調査が完了したとは扱いません。

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IPA:FEシラバス Ver.9.2

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編集・検証について

編集・検証:IT資格ラボ編集部

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