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OSPFルーティング設計と障害迂回(エリア分割・コスト・再配送)

公開: 2026-10-06更新: 2026-10-07
OSPFルーティング設計と障害迂回(エリア分割・コスト・再配送)を図表とオリジナル演習で解説。動作条件、障害の切り分け、解答の考え方を整理し、NWの午後試験・科目B群の学習と実務に役立てます。

本記事はNWの午後試験・科目B群の学習を支える技術解説です。演習と解答例は当サイトのオリジナルで、IPAの公式問題・公式採点基準ではありません。製品ごとの設定差や、問題文で仮定した条件を区別して読み進めてください。

1. 概要と本質:なぜ大規模ネットワークでOSPFが必須なのか

企業の拠点数が数十〜数百に拡大し、複数回線による冗長化やデータセンタ接続が重層化すると、静的ルーティング(スタティックルート)の手動管理は破綻します。回線断やルータ故障のたびに管理者が手動で経路を書き換えることは不可能なため、自律的にトポロジの変化を検知し、瞬時に最適迂回路を計算してルーティングテーブルを更新する「動的ルーティングプロトコル」が必要不可欠となります。

ネットワークスペシャリスト(NW)午後・科目B試験において、社内網(IGP: Interior Gateway Protocol)の標準として出題の中心を担うのが OSPF(Open Shortest Path First: RFC 2328) です。 本稿では、ダイクストラ法によるリンクステート同期、エリア分割(バックボーンエリア0とスタブエリア)の真の目的、LSAタイプ別の役割、コスト計算の落とし穴、および外部経路との再配送(ルート再配送)設計を徹底解剖します。


2. OSPFの基本動作とネイバー関係の確立プロセス

OSPFは「リンクステート型」プロトコルであり、各ルータが「自分自身のインタフェース状態(IPアドレス、サブネットマスク、接続先、コスト)」をLSA(Link State Advertisement)というパケットで相互に交換し、エリア内の全ルータが完全に一致した地図(LSDB: Link State Database)を保持します。

2.1 DR(代表ルータ)とBDR(副代表ルータ)の役割

イーサネットのようなブロードキャストマルチアクセス環境で、全ルータが相互にLSAを直接交換し合うと、ルータ数 NN に対して N(N−1)/2N(N-1)/2 個のネイバー関係が生じ、回線がLSAパケットで溢れかえります。

  • 解決策:

- セグメント内で1台の DR(Designated Router) と、その予備である BDR(Backup DR) を選定。 - 一般ルータ(DROther)はDRおよびBDRとのみ「Full」状態を確立する。 - 一般ルータは 224.0.0.6(AllDRouters) 宛てに更新を通知し、DRが 224.0.0.5(AllSPFRouters) でセグメント全体にフラッディング(再配布)する。


3. OSPFのコスト計算と「参照帯域幅」の落とし穴

OSPFにおける経路の良し悪し(メトリック)は、各インタフェースの「コスト(Cost)」の累積合計値で判定されます。

インタフェースコスト=参照帯域幅 (Reference Bandwidth)インタフェース帯域幅\text{インタフェースコスト} = \frac{\text{参照帯域幅 (Reference Bandwidth)}}{\text{インタフェース帯域幅}}

[!CAUTION] 試験頻出の落とし穴:参照帯域幅のデフォルト値問題 OSPF仕様策定時のデフォルト参照帯域幅は 100Mbps(設定例)(10810^8 bps) です。 この計算式では、100Mbps(設定例)以上の高速回線はすべてコストが「1」になってしまいます。 - 100Mbps(設定例)回線: 100M/100M=コスト 1100\text{M} / 100\text{M} = \text{コスト } 1 - 1Gbps回線: 100M/1G=0.1→コスト 1100\text{M} / 1\text{G} = 0.1 \rightarrow \text{コスト } 1(最小値1に切り上げ) - 10Gbps回線: 100M/10G=0.01→コスト 1100\text{M} / 10\text{G} = 0.01 \rightarrow \text{コスト } 1 このため、デフォルトのままでは「10Gbpsの超高速光回線」と「100Mbps(設定例)の旧式回線」が等コストと誤判定され、等コストマルチパス(ECMP)で100Mbps(設定例)側にパケットが大量流入して大輻輳を引き起こすという重大インシデントが発生します。 【対策】: 全ルータで auto-cost reference-bandwidth を 10000(10Gbps基準)や 100000(100Gbps基準)に統一設定する。


4. マルチエリア設計とLSAタイプ別の役割

大規模ネットワークにおいて、単一のエリアだけで運用すると、ネットワークの端で1本のリンクがフラッピング(断続的な瞬断)しただけで、全ルータが毎回CPUを高負荷にしてダイクストラ計算(SPF再計算)を走らせることになります。

これを防ぐため、ネットワークを複数の「エリア(Area)」に論理分割します。

4.1 LSAタイプとエリアの分類マトリクス

午後試験で出題されるLSAのタイプ一覧です。

LSAタイプ

名称

生成元

到達範囲

内容

Type 1

Router LSA

各ルータ

自エリア内のみ

自身のインタフェース、IPアドレス、コスト情報。

Type 2

Network LSA

各セグメントのDR

自エリア内のみ

マルチアクセスセグメントに接続されたルータ一覧。

Type 3

Summary LSA

ABR(エリア境界ルータ)

他エリアへ転送

自エリア内の経路を集約し、他エリアへ広報する。

Type 4

ASBR Summary LSA

ABR

他エリアへ転送

ASBR(自律システム境界ルータ)自体の所在地を他エリアへ広報。

Type 5

AS External LSA

ASBR

OSPFドメイン全体(スタブ除く)

BGPや静的経路からOSPFへ再配送された外部経路。

4.2 特殊エリア(スタブエリア)によるルーティングテーブル削減

末端の支社(Area 1など)には、インターネットや他社網の膨大な外部経路(Type 5 LSA)を伝える必要はありません。

  • スタブエリア(Stub Area):

- ABRが Type 4/5 LSAの進入をブロック し、代わりに デフォルトルート(Type 3) を1本だけ注入する。 - 末端ルータのメモリ消費とSPF計算負荷が激減する。

  • トータリースタブエリア(Totally Stubby Area: Cisco独自/実質標準):

Totally StubはType 4/5と通常のType 3を制限し、ABRのデフォルト経路を残すベンダ拡張である。エリア内のType 1/2による経路も残る。


5. 科目B形式 実戦演習問題

【設問シナリオ】

総合流通企業のM社では、全国の物流拠点を結ぶ社内WANをOSPFによって運用している。 現行の構成では、本社データセンタを「エリア0(バックボーン)」とし、東西の物流センターをそれぞれ「エリア10」「エリア20」としてマルチエリア運用を行っている。

今般、新設された地方配送拠点(拠点C)をエリア10のルータR-10配下に接続した。 拠点CのルータR-Cは安価なブランチルータを採用しており、CPUおよびメモリリソースが極めて乏しい。 一方、本社データセンタのASBRルータでは、取引先企業とのBGP接続により約5,000本の外部BGP経路をOSPFへ再配送(Type 5 LSAとして注入)している。

ルータR-CのCPU使用率が定期的に100%へ達した。調査で、外部経路の変動に伴うType 5 LSA更新が多数到着し、外部経路計算とLSDB保持の処理が負荷の主因と確認した。


【設問1】

ルータR-CのCPU高負荷およびメモリ逼迫が発生している原因について、ASBRから生成されるLSAの種別と、R-Cにおける処理内容に着目して35字以内で説明せよ。

解答への思考プロセス

  • 原因の特定:

本社ASBRから多数の外部LSAが届き、外部経路の変動に応じた計算と保持がR-Cの負荷となった。Type 5更新をすべて完全なSPFツリー再計算と同一視しない。

  • 設問要求:

解答にはType 5等の外部LSAと、経路の計算・保持による負荷増加を含める。

  • 35字以内への圧縮:

外部LSAの頻繁な変更で経路計算と保持の負荷が増えたため。

模範解答

外部LSAの頻繁な変更で経路計算と保持の負荷が増えたため。


【設問2】

ルータR-Cのハードウェアを増強することなく、かつ拠点Cから全国拠点および外部ネットワークへの通信到達性を完全に維持したまま本問題を解決するために、エリア10に対して実施すべきOSPFのエリア設定変更を35字以内で答えよ。

解答への思考プロセス

  • 解決策:

- エリア10を「スタブエリア(Stub Area)」または「トータリースタブエリア」に設定変更する。 - これにより、エリア境界ルータ(ABR)がType 5 LSA(外部経路)の進入を遮断し、代わりにデフォルトルート(0.0.0.0/0)を1本だけエリア10内に注入する。 - 拠点Cからはデフォルトルートに従ってABRへパケットを送ればすべての外部・他エリア通信が正常に到達できる。

  • 字数への落とし込み:

- 「エリア10をスタブエリアに設定し、デフォルトルートを注入する。」

模範解答

エリア10をスタブエリアに設定し、デフォルトルートを注入する。


6. まとめ

OSPFの設計品質は、単に「つながる」ことではなく、「障害発生時のLSAフラッディング範囲をエリア分割でいかに局所化できるか」で決まります。 次稿 NWP-05(BGP-4マルチホーム接続とトラフィック制御の実践技術) では、社内網(IGP)を超えてインターネット・外部クラウドと自律システム(AS)間を接続するBGPのポリシー制御を解説します。

OSPF設計の前提条件

OSPFのインタフェースコストは設定可能である。「基準帯域100Mbps÷リンク帯域」は一部製品の既定計算例で、RFCが固定値100Mbpsを規定しているわけではない。高速リンクでは全ルータの基準帯域と明示コストをそろえる。

DR/BDRはブロードキャスト等のネットワーク種別で選出され、優先度0は候補外。原則として非プリエンプティブなので、後から高優先度ルータが参加しても既存DRを直ちに置き換えない。図は同時選出時の例である。

Type 3はABRが他エリアへ経路情報を生成するLSAで、必ず複数プレフィックスを集約するものではない。StubはType 4/5を制限するがType 3の他エリア経路は残る。Totally Stubはベンダ拡張で、エリア内のType 1/2による経路とABRのデフォルト経路は残る。

LSAが5,000件あるだけではCPU高負荷や頻繁なSPFを断定できない。変更頻度、LSA種別、外部経路計算、装置容量を確認する。Stub化の演習では、対象エリア内にASBRがなく、通過エリアではなく、全ルータがStub設定に合意し、ABRから外部へ到達できることを前提とする。

参考資料・関連する学習記事

RFC 2328

次に読む:BGP-4マルチホーム接続とトラフィック制御の実践技術

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編集・検証について

編集・検証:IT資格ラボ編集部

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