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社内LAN冗長化設計とSTP・MC-LAG・スタック接続の実務

公開: 2026-10-06
社内LANのL2冗長化設計を徹底解説。タグVLAN、RSTP/MSTPのポート状態遷移、MC-LAGによるリンク集約、スタック接続、午後・科目B形式の実戦演習を収録。

1. 概要と本質:なぜL2ネットワークの冗長化は失敗しやすいのか

企業ネットワークのLAN設計において、「機器が1台故障しても、ケーブルが1本断線しても通信を継続させる(高可用性・冗長化)」ことは絶対の必須要件です。 しかし、レイヤ2(イーサネット)の世界には、IPパケットのTTL(Time to Live)のような「パケットの寿命を制限する仕組み」が存在しません。

もしL2スイッチ間に物理的なループ配線が存在し、制御プロトコルが機能しなかった場合、ブロードキャストフレーム(ARP要求など)がスイッチ間を永久に増殖・周回し続ける「ブロードキャストストーム」が発生します。これにより、わずか数秒でネットワーク帯域とスイッチのCPUが飽和し、社内全体のネットワークが完全に停止します。

本稿では、ネットワークスペシャリスト(NW)午後・科目B試験の最頻出テーマである「スパニングツリープロトコル(STP/RSTP)」の根底動作と、STPの欠点(待機回線の帯域浪費)を克服する現代の業界標準「MC-LAG(マルチシャーシリンクアグリゲーション)」および「スタック接続」の設計実務を徹底解説します。


2. スパニングツリープロトコル(STP/RSTP)のメカニズム

STP(IEEE 802.1D)およびRSTP(IEEE 802.1w: Rapid STP)は、物理的にループ状に接続されたスイッチネットワークにおいて、論理的に特定のポートをブロック(通信遮断)し、ツリー構造(木構造)のループフリートポロジを動的に構築するプロトコルです。

2.1 ルートブリッジ選定とポート役割の決定ルール

午後試験では、スイッチ間のBPDU(Bridge Protocol Data Unit)のやり取りを追跡し、「どのポートがRoot Portになり、どのポートがAlternate Port(ブロック)になるか」を判定させる問題が頻出します。

【判定の4ステップ(厳守)】

  1. ルートブリッジ(Root Bridge)の選定:

- ネットワーク全体で「ブリッジID(プライオリティ + MACアドレス)」が最も小さいスイッチがルートブリッジとなる。 - デフォルトプライオリティは 32,768。通常、コアスイッチのプライオリティを意図的に小さく設定(例: 4,096)してルートに固定する。

  1. ルートポート(Root Port: RP)の選定:

- ルートブリッジ以外の各スイッチにおいて、ルートブリッジまでの「パスコストの合計」が最も小さいポートを1つだけ選定する(Forwarding状態)。 - コストが同等の場合は「対向スイッチのブリッジIDが小さい方」→「対向ポート番号が小さい方」で決定。

  1. 指定ポート(Designated Port: DP)の選定:

- スイッチ間の各リンク(セグメント)ごとに、ルートまでの「パスコストの合計」が小さい側のポートを指定ポートとする(Forwarding状態)。 - ルートブリッジの全ポートは必ず指定ポート(DP)になる。

  1. 代替ポート(Alternate Port: AP / ブロッキング):

- RPにもDPにも選ばれなかった残りのポートが、ループ防止のためにブロック(RSTPではDiscarding)される。


2.2 STPの保護機能(障害防止オプション)

実務および試験で頻出する、誤接続や異常BPDUによるネットワーク崩壊を防ぐ4大保護機能です。

機能名

目的と動作

設定推奨箇所

BPDUガード (BPDU Guard)

PCやプリンタを接続する末端アクセスポートに設定。万一、利用者が勝手に安価なハブやスイッチを接続してBPDUが流入した瞬間、ポートを即座にエラー停止(err-disable)させてループを防ぐ。

エンドポイント接続ポート(PortFast有効ポート)

ルートガード (Root Guard)

想定外の外部スイッチが勝手に小さなプライオリティを詐称して「ルートブリッジの座を奪う」ことを防止。指定ポート以外で優位なBPDUを受信した場合、そのポートをブロック(Root-Inconsistent)状態にする。

コアスイッチのダウンリンクポート

ループガード (Loop Guard)

光ファイバの片芯断線などで「BPDUを受信できなくなったがデータは送信できる」単方向リンク障害時、ブロッキングポートが誤ってフォワーディングに昇格してループが発生するのを防ぐ。

アップリンクのトランクポート

UDLD (Unidirectional Link Detection)

光ケーブルやメタル回線の単方向通信障害をL2レイヤで能動的に検知し、障害ポートを即座にシャットダウンするプロトコル。

スイッチ間の全光ファイバ接続


3. 現代の主流:STPから「MC-LAG(マルチシャーシLAG)」への進化

3.1 STPの決定的な弱点

STPは確実にループを防ぎますが、現代の大規模ネットワークでは以下の致命的な欠点があります。

  1. 帯域の半分が無駄になる:

- 冗長化のために2本の回線(例: 10Gbps × 2)を敷設しても、1本はブロックされるため、平常時は10Gbpsしか利用できない。

  1. フェイルオーバー時の切断時間:

- RSTPでもトポロジ変更通知(TC-BPDU)によるMACアドレステーブルのフラッシュと再学習が発生し、数百ミリ秒〜数秒の通信断が生じる。

3.2 MC-LAGによる「アクティブ/アクティブ」構成

この課題を解決するのが、2台の物理スイッチを論理的に1台の仮想スイッチに見せかけ、リンクアグリゲーション(LACP: 802.3ad)を束ねる「MC-LAG(Multi-Chassis Link Aggregation)」です。

MC-LAGの圧倒的メリット

  1. 全ポート・全帯域が常時通信可能(アクティブ/アクティブ):

- ブロッキングポートが存在しないため、2本束ねれば20Gbpsの帯域を100%活用可能。

  1. ミリ秒単位の障害切り替え:

- 1本の回線やスイッチ1台がダウンしても、残りの1本が既にアクティブであるため、STPのような再計算なしに瞬時(50ミリ秒以下)に通信が引き継がれる。

  1. STPループの根絶:

- トポロジが論理的にスター型(ポイントツーポイント)となるため、L2ループ自体が原理的に発生しない。


3.3 スプリットブレイン障害とピアキープアライブ

MC-LAGを設計する際、午後試験で必ず問われるのが「スプリットブレイン(Split-Brain)対策」です。

  • スプリットブレインとは:

- スイッチAとBを結ぶ同期リンク(Peer Link / ICCL)が断線した際、双方が「相手スイッチが死んだ」と誤認し、両方が独立してプライマリ(代表)として動作してしまう現象。 - 同一のMACアドレスや仮想IP(VRRPアドレス等)が2箇所からアナウンスされ、通信がブラックホール化する。

  • 防止策:

- 業務データを通す「Peer Link」とは別に、独立した管理ネットワーク経由で「Keepaliveリンク(死活監視専用ハートビート)」を敷設する。 - Peer Linkが切れてもKeepaliveが生きている場合、セカンダリ側のスイッチは自発的に全ダウンリンクポートをシャットダウンし、スプリットブレインを防ぐ。


4. 科目B形式 実戦演習問題

【設問シナリオ】

保険会社のK社では、本社ビル内LANの更改工事を計画している。 現行のネットワークは、2台のコアL3スイッチ(L3SW-1、L3SW-2)と、各フロアに配置された8台のフロアスイッチ(L2SW-1〜8)で構成されている。

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【現行構成】
各フロアL2SWは、L3SW-1およびL3SW-2へ各1本の1Gbpsリンクで接続され、
Rapid PVST+(VLANごとのRSTP)によってL3SW-2側のポートがブロッキングされている。

今般、Web会議の全社的普及に伴いフロアアップリンクの帯域不足が顕著となったため、K社ネットワーク刷新プロジェクトでは、2台のコアスイッチをMC-LAG対応スイッチに置き換え、フロアスイッチとの接続をLACPによるリンクアグリゲーション構成に変更することを決定した。


【設問1】

現行のSTP構成と比較して、MC-LAGを導入することによって得られるネットワーク性能および耐障害性に関する技術的メリットを、帯域利用効率と障害発生時の切替動作の2点に着目し、40字以内で述べよ。

解答への思考プロセス

  • 論点の抽出:

- ① 帯域利用効率:STPのようにブロックポートを作らず、2本のリンクを束ねて常時両方を利用できる(帯域が2倍)。 - ② 障害時の切替動作:STPのトポロジ再計算やMACテーブルフラッシュを伴わず、瞬時に残りのリンクで通信を継続できる。

  • 40字以内への圧縮:

- 「2本のリンクを同時に通信利用でき、障害時もSTPの再計算なしに瞬時に通信継続できる。」(41字→調整) - 「両回線を常時通信に利用でき、障害時もSTPの再計算なしに瞬時に切り替わること。」(38字)

模範解答

両回線を常時通信に利用でき、障害時もSTPの再計算なしに瞬時に切り替わること。(38字)


【設問2】

MC-LAG構成において、2台のコアスイッチ間を接続するPeer Link(同期用回線)が全断線した際に、両スイッチが同時にアクティブとして動作してIPアドレスやMACアドレスの重複障害(スプリットブレイン)を引き起こすことを防止するため、K社が導入すべきハードウェア的・論理的対策を35字以内で述べよ。

解答への思考プロセス

  • スプリットブレイン防止策:

- Peer Linkとは独立した物理経路で死活監視を行う「Keepaliveリンク(ハートビート)」を敷設する。 - または、Peer Link切断時にセカンダリ側スイッチのダウンリンクポートを自発的に停止させる。

  • 字数への落とし込み:

- 「独立した死活監視用回線を設け、セカンダリのポートを遮断する。」(30字) - 「Peer Linkとは別経路の死活監視回線を設け、相手の生存を確認する。」(34字)

模範解答

Peer Linkとは別経路の死活監視用回線を設け、相手の生存を確認する。(34字)


5. まとめ

L2冗長化の本質は、「ループの完全排除」と「全帯域の能動活用」のトレードオフをいかに解消するかにあります。 次稿 NWP-04(OSPFルーティング設計と障害迂回) では、レイヤ3における自律的な最短経路計算と、エリア分割・経路集約による安定運用の実務を解説します。

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編集・検証について

編集・検証:IT資格ラボ編集部

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