業務委託におけるセキュリティリスク

■ 解き方の方針 発見事項から攻撃者が何を再現できるかを考え、その事実と直接つながるリスクを選びます。重要なのは、複合機メールの外見を決める初期設定が固定され、誰でも知ることができる点です。 ■ 発見事項から生じる攻撃 差出人アドレス、件名、本文、添付ファイル名が、誰がスキャンしても同じです。 その初期設定情報はベンダーのWebサイトで公開されています。 攻撃者は公開情報を使い、本物の複合機メールに似せた偽メールを作れます。 受信者が偽メールを本物と信じ、本文のURLを開くと、複合機やBサーバを装ったフィッシングサイトへ誘導されるおそれがあります。そこで認証情報などを入力すると、採用予定者の個人情報への不正アクセスにつながります。 ■ 他の選択肢との違い イ: 誤って削除する可能性より、公開された書式を攻撃者が偽装に使えることが中心的なリスクです。 ウ: 盗聴やランサムウェアは、メールの初期設定を変更しても防げません。 エ: BサーバはURLだけでなく利用者IDとパスワードを要求します。また、盗聴は公開された初期設定から生じる問題ではありません。 ■ 正解と誤答の見分け方 したがって、正解は ア です。 初期設定を変更してA社の業務用メールだと識別できる内容にすれば、公開済みの初期設定をそのまま使った偽装を見分けやすくできます。

A社は、放送会社や運輸会社向けに広告制作ビジネスを展開している。A社は、人事業務の効率化を図るべく、人事業務の委託を検討することにした。A社が委託する業務(以下, B業務という)を図1に示す。

  • 採用予定者から郵送されてくる入社時の誓約書、前職の源泉徴収票などの書類を PDF ファイルに変換し、ファイルサーバに格納する。

(省略)

図1 B業務

委託先候補のC社は、B業務について、次のようにA社に提案した。

  • B業務だけに従事する専任の従業員を割り当てる。

  • B業務では、図2の複合機のスキャン機能を使用する。

  • スキャン機能を使用する際は、従業員ごとに付与した利用者 IDとパスワードをパネルに入力する。

  • スキャンしたデータをPDFファイルに変換する。

  • PDFファイルを従業員ごとに異なる鍵で暗号化して、電子メールに添付する。

  • スキャンを実行した本人宛てに電子メールを送信する。

  • PDFファイルが大きい場合は、PDF ファイルを添付する代わりに、自社の社内ネットワーク上に設置したサーバ (以下, Bサーバという) に自動的に保存し、保存先のURLを電子メールの本文に記載して送信する。

注: Bサーバにアクセスする際は、従業員ごとの利用者IDとパスワードが必要になる。)

図2 複合機のスキャン機能(抜粋)

A社は、C社と業務委託契約を締結する前に、秘密保持契約を締結した。その後、C社に質問表を送付し、回答を受けて、業務委託での情報セキュリティリスクの評価を実施した。その結果、図3の発見があった。

  • 複合機のスキャン機能では、電子メールの差出人アドレス、件名, 本文及び添付ファイル名を初期設定の状態で使用しており、誰がスキャンを実行しても同じである。

  • 複合機のスキャン機能の初期設定情報はベンダーの Web サイトで公開されており、誰でも閲覧できる。

注: 複合機の初期設定はC社の情報システム部だけが変更可能である。

図3 発見事項

そこで、A社では、初期設定の状態のままではA社にとって情報セキュリティリスクがあり、初期設定から変更するという対策が必要であると評価した。

設問 対策が必要であるとA社が評価した情報セキュリティリスクはどれか。解答群のうち、最も適切なものを選べ。

出典令和5年度 公開問題 基本情報技術者試験 科目B 問6
ア
B 業務に従事する従業員が、攻撃者からの電子メールを複合機からのものと信じて本文中にあるURLをクリックし、フィッシングサイトに誘導される。その結果、A社の採用予定者の個人情報が漏えいする。
イ
B 業務に従事する従業員が、複合機から送信される電子メールをスパムメールと誤認し、電子メールを削除する。その結果,再スキャンが必要となり、B 業務が遅延する。
ウ
攻撃者が、複合機から送信される電子メールを盗聴し、添付ファイルを暗号化して身代金を要求する。その結果、A社が復号鍵を受け取るために多額の身代金を支払うことになる。
エ
攻撃者が、複合機から送信される電子メールを盗聴し、本文に記載されているURL を使ってBサーバにアクセスする。その結果、A社の採用予定者の個人情報が漏えいする。