A 社はSaaS(以下,A サービスという)を顧客に提供し,定期的に顧客からの機能追加要望に対応するリリースを実施しているが,A サービスの機能追加の開発投資が当初計画より増えて,A 社では資金繰りが悪化している。A サービスの収益は,顧客との従量制の利用料金での継続利用契約と,A サービスの事業運営に大きな影響がある大口顧客からの固有の機能追加の要望に個別料金で対応する個別契約に支えられている。継続利用契約は長期的に収益を安定化させるが,契約顧客が少ないと開発費の回収には期間を要する。一方,大口顧客との個別契約は短期的な資金繰りの改善に寄与する。
昨年度の機能追加のリリースでは,顧客が参加するリリース前の運用訓練で,機能追加要望に対するA 社の認識誤りに起因する不具合が発覚して,一部機能のリリースが中止となった。これによって一部の顧客が不信感をもち,本年度になってA サービスからの離脱を検討していることが判明した。さらに,他の顧客からもリリース中止のような事態の再発防止について声があがっている。このままでは今でも厳しいA 社の資金繰りが更に厳しくなるおそれがある。A 社経営層は,この状況を鑑みて,機能追加及び確実なリリースの顧客要望を実現するとともに,A 社の短期的な資金繰りを改善することを目標に,本年度のA サービス機能追加プロジェクト(以下,A プロジェクトという)を立ち上げ,X 氏をプロジェクトマネージャに任命した。X 氏は,A サービスの過去からのバックログを含む機能追加の顧客要望の特性,及び開発費の回収方法を表1 のように整理した。
表1 機能追加の顧客要望の特性と開発費の回収方法
分類 | 顧客要望の特性 | 開発費の回収方法 |
|---|---|---|
要望1 | 制度改正への対応など多くの顧客からの要望で,多数の顧客の継続利用につながるので,開発の優先度は要望2 よりも高い。A プロジェクトで対応予定の要望について,顧客に意向をヒアリングしている。 | 大多数の顧客からの利用料金で,1 年~2 年程度の期間で開発費を回収する。 |
要望2 | 一部の顧客からの要望である。要望している顧客以外の顧客に利用の意向確認をしている。 | 実現した場合は機能を利用する顧客からの利用料金で,3 年~5 年程度の期間で開発費を回収する。 |
要望3 | 主に大口顧客からの固有の要望であり,他の顧客の継続利用にはつながりにくい。 | 要望している顧客と開発費の負担について合意すれば,開発費をリリース時に顧客に請求して回収し,保守費も継続的に顧客に請求して回収する。 |
X 氏が,過去からのバックログを含む機能追加の顧客要望を全て実現した場合の開発費を見積もったところ,A プロジェクトの予算を大幅に超過した。X 氏は,①予算の範囲での顧客の機能追加及び確実なリリースの要望の実現と,A 社の短期的な資金繰りを改善することの二つの条件を満たすためのA プロジェクトの進め方を経営層に報告することにした。
設問 本文中の下線①の二つの条件を満たすためのA プロジェクトの進め方を二つ挙げた組合せはどれか。解答群の中から最も適切なものを選べ。
(一) 要望2 の要望で,要望した顧客以外に利用する意向を示した顧客が少数でもいる要望は,優先して実現する。
(二) 運用訓練の期間をこれまでよりも長くして,顧客に不具合の有無をしっかりと確認してもらう。
(三) 要望1 の要望で,顧客にヒアリングした結果,利用する顧客が少ないことが分かったが,そのまま開発を行うこととした。
(四) 要望3 の要望で,大口顧客と費用負担に合意した要望は,優先して実現する。
(五) 顧客に要件定義に参加してもらって,定義した要件が顧客の要望に適合しているかどうかを確認する。