ガイドSG

暗号技術と公開鍵基盤(PKI)の仕組み|共通鍵・公開鍵・電子署名・証明書を完全図解

公開: 2026-10-03
情報セキュリティマネジメント試験(SG)の最頻出分野「暗号技術とPKI」を徹底解説。共通鍵AESと公開鍵RSA、ハイブリッド暗号、ディジタル署名、認証局(CA)と証明書失効(CRL/OCSP)を科目B演習付きで網羅。

情報セキュリティの3大要素である「機密性」「完全性」を担保し、現代のネットワーク通信の基盤を支えているのが「暗号技術」と「公開鍵基盤(PKI:Public Key Infrastructure)」です。

情報セキュリティマネジメント試験(SG)の科目A・科目Bでは、単にアルゴリズムの名前を暗記するだけでなく、「どの鍵で暗号化し、どの鍵で復号・検証するのか」「ディジタル署名とハッシュ関数が何を証明しているのか」「認証局(CA)がなぜ必要なのか」という技術の目的と役割の因果関係が繰り返し問われます。

1. 共通鍵暗号と公開鍵暗号の決定的な相違

暗号化方式には大きく分けて「共通鍵暗号方式」と「公開鍵暗号方式」の2つが存在します。両者の長所と短所を理解することが、すべての暗号問題の出発点です。

暗号方式

使用する鍵

暗号化・復号速度

鍵管理の課題

代表的アルゴリズム

共通鍵暗号方式

暗号化と復号で「同じ鍵」を使用

非常に高速(大量データの暗号化に最適)

通信相手ごとに鍵が必要(n人の場合 n(n-1)/2 個)。鍵の配送が困難

AES(現在の標準), DES(過去の規格)

公開鍵暗号方式

「公開鍵」と「秘密鍵」のペア(異なる鍵)を使用

低速(共通鍵の100〜1,000倍の計算コスト)

各自がペアを1組持つだけ(n人の場合 2n 個)。公開鍵は誰に配っても安全

RSA, 楕円曲線暗号(ECC)

ハイブリッド暗号方式の実務設計

Web通信(TLS/HTTPS)やセキュアメール(S/MIME)では、両者のメリットを組み合わせた「ハイブリッド暗号方式」が標準的に採用されています。

  1. 送信者は、高速な「共通鍵(セッション鍵)」をランダムに生成し、通信データ本文を共通鍵で暗号化する。

  2. 送信者は、受信者の「公開鍵」を使って、セッション鍵だけを暗号化する。

  3. 暗号化されたデータ本文と、暗号化されたセッション鍵を受信者へ送信する。

  4. 受信者は、自分だけの「秘密鍵」で暗号化セッション鍵を復号し、取り出したセッション鍵でデータ本文を復号する。

この仕組みにより、「鍵の配送問題の解決(公開鍵暗号の利点)」と「大量データの高速暗号化(共通鍵暗号の利点)」を同時に実現しています。

2. ハッシュ関数とディジタル署名が担保するもの

暗号化が「機密性(盗聴防止)」を守るのに対し、データの「完全性(改ざん防止)」と「真正性(なりすまし防止・送信者の否認防止)」を担保するのが「ディジタル署名」です。

一方向ハッシュ関数の3大特性

ハッシュ関数(SHA-256等)は、任意の長さのデータから固定長のハッシュ値(メッセージダイジェスト)を生成する関数であり、以下の特性を持ちます。

  • 一方向性(不可逆性):ハッシュ値から元のデータを復元することは計算量的に不可能である。

  • 弱衝突困難性:あるデータ M に対し、ハッシュ値が一致する別のデータ M' を見つけることが極めて困難である。

  • 強衝突困難性:ハッシュ値が一致する任意の異なる2つのデータペアを見つけることが極めて困難である。

ディジタル署名の生成と検証の流れ

ディジタル署名は、公開鍵暗号の鍵ペアを暗号化とは「逆向き」に使用します。

手順

実行者

使用する鍵

処理内容と目的

署名の生成

送信者(作成者)

送信者の「秘密鍵」

本文のハッシュ値を送信者の秘密鍵で暗号化し、「ディジタル署名」として本文に添付する。

署名の検証

受信者(検証者)

送信者の「公開鍵」

①本文からハッシュ値Aを自ら計算する。②署名を送信者の公開鍵で復号し、ハッシュ値Bを取り出す。③AとBが完全一致すれば、改ざんがなく送信者本人が作成したことが証明される。

【試験の鉄則】暗号化は「受信者の公開鍵」でかけ、「受信者の秘密鍵」で解く。ディジタル署名は「送信者の秘密鍵」でかけ、「送信者の公開鍵」で検証する。

3. 公開鍵基盤(PKI)とディジタル証明書の実務

ディジタル署名において致命的な脆弱性となるのが、「送信者の公開鍵そのものが偽物(なりすまし者の公開鍵)にすり替えられていたらどうするか?」という点です。この問題を解決するのが「公開鍵基盤(PKI)」と「ディジタル証明書(X.509)」です。

  • 認証局(CA:Certification Authority):申請者の身元を審査し、公開鍵に対してCA自身のディジタル署名を付与した「ディジタル証明書」を発行する第三者機関。

  • ルートCAと中間CA:階層構造(信頼の連鎖:Chain of Trust)を形成し、最上位のルート証明書はOSやブラウザに事前インストールされている。

  • 証明書の失効確認:秘密鍵が漏えいした場合や退職時に証明書を失効させるため、CRL(証明書失効リスト)のダウンロードや、リアルタイムに失効照会を行う OCSP(Online Certificate Status Protocol)が運用される。

4. 科目B形式実戦シナリオ演習

演習1:電子契約システムにおける真正性と完全性の検証

〔背景〕製造業A社では、取引先B社との間で業務委託契約を電子化するため、クラウド型電子契約サービスを導入することになった。A社の法務担当者は情報セキュリティリーダーのC氏に、電子署名の仕組みと法的有効性の根拠について確認を求めた。

〔課題と運用設計〕C氏は、電子署名法に準拠した契約フローを策定した。契約書PDFを作成したA社は、自社が信頼する認証局から発行された電子証明書に基づき、契約書に電子署名を付与してB社へ送信する。

〔設問〕次の記述のうち、B社がA社からの電子署名付き契約書を受信した際に行う検証処理として、最も適切なものはどれか。

  • ア:B社は自社の秘密鍵で契約書を復号し、契約書の改ざんがないことを確認する。

  • イ:B社はA社の公開鍵で電子署名を復号して得たハッシュ値と、受信した契約書本文から計算したハッシュ値を突合し、一致することを確認する。

  • ウ:B社は認証局の秘密鍵で電子証明書を復号し、A社の身元が正当であることを確認する。

  • エ:B社はA社の秘密鍵で電子署名を検証し、署名時刻が有効期間内であることを確認する。

【解答と解説】

正解:イ

解説:ディジタル署名の検証手順として完全に正しい記述です。受信者B社は、送信者A社の公開鍵(電子証明書に含まれる公開鍵)を用いて署名を復号し、得られたハッシュ値と、契約書本文から自ら計算したハッシュ値が一致することを検証します。これにより「本文の非改ざん性(完全性)」と「A社本人が署名したこと(真正性・否認防止)」が同時に証明されます。

  • ア:誤り。B社自身の秘密鍵で復号するのは「B社宛てに暗号化された文書」を読むときの手順です。

  • ウ:誤り。認証局の電子署名は「認証局の公開鍵(ルート証明書等)」で検証します。秘密鍵は認証局自身が厳重に保管しており、第三者は所持していません。

  • エ:誤り。A社の秘密鍵はA社自身しか持っておらず、B社がA社の秘密鍵を使用することはあり得ません。

演習2:証明書失効とWebサイトなりすましリスクへの初動

〔背景〕ECサイトを運営するD社では、WebサーバにSSL/TLSサーバ証明書を導入している。ある日、インフラ担当者が社内検証用サーバのディスクを外部業者へ廃棄依頼した際、本番Webサーバの秘密鍵(Private Key)ファイルが誤って検証用ディスク内に残存していた可能性が判明した。

〔設問〕このインシデントにおいて、秘密鍵の漏えいによる第三者のなりすまし被害を即座に防ぐため、D社が最優先で認証局(CA)に対して実施すべき手続きはどれか。

  • ア:認証局に対して証明書の更新(Renewal)を申請し、有効期限を延長する。

  • イ:認証局に対して証明書の失効(Revocation)を申請し、CRLやOCSPに反映させる。

  • ウ:認証局に対して公開鍵の再暗号化を依頼し、利用者に新パスワードを配布する。

  • エ:WebサーバのDNS設定を変更し、認証局のIPアドレスを自社に向ける。

【解答と解説】

正解:イ

解説:秘密鍵が漏えいまたは漏えいの疑いが生じた場合、攻撃者がその秘密鍵を使って本物のサーバになりすましたフィッシングサイトを構築したり、通信を復号・傍受したりする危険があります。最優先すべき対応は、発行元の認証局(CA)に即座に「証明書の失効申請(Revocation)」を行い、CRL(証明書失効リスト)やOCSPレスポンダに失効情報を登録させることです。これにより、一般利用者のブラウザが接続時に警告画面を表示し、被害を未然に防止できます。

5. まとめと試験直前チェックリスト

  • 暗号化:受信者の公開鍵で暗号化 → 受信者の秘密鍵で復号(機密性の担保)

  • 署名:送信者の秘密鍵で署名生成 → 送信者の公開鍵で署名検証(完全性+真正性の担保)

  • ハイブリッド暗号:本文は高速な共通鍵で暗号化し、共通鍵を公開鍵で暗号化して届ける

  • CA(認証局):公開鍵が本人のものであることを証明書と自らの署名で保証する第三者機関

  • 秘密鍵漏えい時:認証局への速やかな失効申請(CRL/OCSP反映)が最優先初動

次におすすめの学習

この記事を共有する

編集・検証について

編集・検証:IT資格ラボ編集部

IPAが公開する試験要綱・シラバス・過去問題と、各技術の公式資料を優先して内容を確認しています。制度変更や誤りを確認した場合は、記事を見直して更新します。

編集方針・情報源・訂正方針を見る